夏が始まったらしい

海岸近くでもないのに、外にいるだけで体がべたついている。

何となく腕が痒いと思ったら、小さいあいつにやられた跡が丸くぷくっと膨れている。

昨日からか一昨日からか、分からないが気付いたら蝉の声が聞こえている。

 

どうやら、夏が始まったらしい。

 

私の地元の神社では、毎年小さなお祭りが開催される。小さい、と言っても都会の真ん中にある神社のために面積が狭いというだけで、クオリティとしてはそれなりに高いお祭りだと思う。

駅から家の帰り道にあたるその神社から先ほど、太鼓を練習する音が聞こえてきた。この音が毎年夏に鳴るということを私は、毎年音が聞こえてきてから思い出す。そして毎年これを聞くと夏だと感じる、ということも、毎年音が聞こえてきてから思い出す。

どんちゃんどんちゃん、いつも10日ほど前から鳴り出すこの音だけを聞いていると、ここが都会であること、神社のすぐ側に片側二車線道路が通っているということ、その近くには背の高いビルがあることを忘れてしまう。

少しうるさいが、気づけばこの音は私の大好きな音の仲間入りをしている。

 

もう私は、家から遠くの大きなお祭りに行くようになった。浴衣を着て、花火の見える、人で溢れかえったお祭り。

小さな子どもと地元の関係者ばかりのこのお祭りを私は、今年も音だけで楽しむのだろう。