幼なじみポジションは最強説

恋人が欲しい

とまあいろんなところで聞く。私も言う。しかし近ごろ思うことは、

 

幼なじみで仲の良い男友達が、欲しい。

 

ということだ。男友達は誰にだっているだろう。しかし、何でもできる、何でも言える男友達となるとかなり人数が絞られないだろうか。私の妄想によれば、幼なじみというポジションはかなり、おいしい。そういうわけで幼なじみで仲の良い男友達がいる生活を羅列してみる。

 

まず第一条件として、その幼なじみはフットワークが軽い。突然誘ってもだいたい予定は空いてるし、短時間でも無理を言うと合わせてくれる。私はただの友人だから何の気を遣うこともなく、「ご飯行こうー」などと適当に誘う。そして、ご飯はだいたいラーメンかその辺の居酒屋だ。いつでも会えるし特別でもないのでわざわざ店を予約したり、なんてことはない。ちなみにこのときは彼には恋人がいてもいい。しかし私はなんの恋愛感情も抱かないのでなにも問題ない。私はきっと彼氏の前じゃ少し食べづらいような全部のせ大盛り油そばを注文し、髪の毛をゴムでまとめて麺を口に入れてゆく。

そしてそのあとはわりとすぐに解散だ。理由はこの幼なじみは恋人と夜に電話をする習慣があるから。やっぱり恋人との時間は大切にしなくちゃいけない。私たちは「じゃあまた〜」と、軽いようで次が約束されている挨拶を交わして別れる。

 

あれ?あそこはカップルなのか?

と周りにあれこれ詮索されることもないから友人はいいものだ。昔からずっと仲のいい私たちは、彼に彼女がいても、私に彼氏がいたときでも、普通に友人関係があった。もはやその仲よさは仲間内でも公認で、怪しまれることも疎まられることもない。

 

私の恋愛相談にもできれば乗ってほしい。

私に彼氏がいたならば、その相談をしたい。最近返事が遅いだの、電話の電波が悪すぎるだの、惚気の入り混じる小さな愚痴を聞いてほしい。友人は私の話をはいはい、と受け流しながらも笑って聞いてくれる。最終的にはいつも、「でも結局幸せなんでしょ?」なんて言って彼氏への愛を再確認させる業務までこなす。

 

あとは一緒に音楽フェスに行きたい。幼なじみ数人、男女数人で野外フェスに行きたい。好きなバンドがそれぞれ違うので、始まると別行動が始まるのだが私とその幼なじみはずっと同じ音楽を聴いて育った。もう好みがぴったりなのだ。だから私と幼なじみは自然と共に行動する。わけわからないくらいにテンションをあげて、汗だくでフェスを楽しむ。飲み物が無くなりかけた頃にしれっと新しいペットボトルを渡してくる。柑橘系で炭酸が弱めのマッチが私の好みだということを幼なじみは当たり前に知っている。「あーあー、あんたが彼氏だったら最高なのになぁー」なんておどけると、なんとも言えない顔で自分の飲み物を飲むのだ。

 

そんな幼なじみから突然電話がかかってきて、次はなんの漫画を貸してって言ってくるのかなーなんて想像してたら、まさかの電話越しで泣いている幼なじみ。突然のことに驚くと、どうやら彼女と別れたらしいのだ。かなり落ち込んでいる。私がこの幼なじみを頼るのと同じように、こいつも私を頼っている。もはや家族だなと、出会ってから15年で何度も私は思うのだ。

 

最大の理想を言えば、彼氏がいない私の彼氏代わりに花火大会に一緒に行きたい。花火大会の日は一応バイトを入れなかったものの、周りの女友達は恋人持ちばかりでどうせ行く人がいないので、家でだらけていた頃。幼なじみからLINEの返信が。

「花火、みたくね?」

ああ、こいつは彼女と行く気だったから予定を空けてたんだ。調子に乗って浴衣を買うといって、3週間ほど前に浴衣選びに付き合った。悩んだ挙句、最終的にはかなり私の好みの浴衣を選んでしまったのだが。

「みたい」

一言だけ返信して私たちの予定は決まった。向こうが着てきやすいように私も浴衣を着る。浴衣姿なんて小さな頃に何度も見せているからもう幼なじみは私の浴衣に萌えるなんてことはないのが少し、虚しい。

小さな頃に何度も仲間内で一緒に行ったいちばん地元の花火大会に、2人で行くのは何気に初めてだ。私たちは手を繋ぐことなんてなくただ出店を楽しみ花火を楽しむ。ああ、何度みても、どんなシチュエーションでみても、結局花火は美しい。

 

帰り際、幼なじみが不意に立ち止まる。「ん?」と振り返ると、鼻をかいている。幼なじみが緊張しているときによくするクセだ。なにに緊張しているのかと聞こうとしたそのときに

「浴衣着てるの、可愛いわ」

と突然褒めてくる幼なじみ。どうしたどうした、何度も見てるじゃん、と茶化すと、顔を赤らめる彼はなんだかいつもよりも男に見えた。私もだんだん赤くなっていることに気付く。今年の夏は、何か始まりそうだ。

 

 

 

だめだ、途中から妄想を越えて物語を作り出してしまった。それに結局幼なじみとどうにかなりたいという下心が出てきてしまった。もう恋人でも幼なじみでもいいから心が満たされる出来事が欲しいだけなのだな、私は。